戦争犯罪は罪ではない、か?
まあね、国内的にはA級戦犯の名誉回復は既に為されてる訳だけど、「A級戦犯は罪人ではない」とまで言い切るのは国際的にはどうかと思います。百歩譲って「戦犯であっても故人を悼む気持ちに区別がないのが日本人の死生観である」というのはまだわからないでもないけど、「罪人ではない」とまで言い切ってしまうのはかなり無理があるんじゃないですか。
さらに「戦争は一つの政治形態であり、(日本は)国際法で定められたルールに乗っかって戦争をした」のも事実としては大筋で間違いない(ま、宣戦布告文書の手交と真珠湾攻撃の前後逆転とかあるけど)のだろうケド、なんか聞きかじりでクラウゼヴィッツの「戦争論」を引用しているだけで、聞き様によれば現代日本も自衛戦争のみならず「政治の延長線上にある一般論としての戦争」をも否定していないように聞こえるんですよ。
その賛否はともかく現在有効な事は一片の疑いも無い日本国憲法が「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄」しているんですから、これは特別職公務員として憲法遵守義務違反を指摘されても言い訳できないでしょう。
個人として「戦犯を裁いた極東国際軍事裁判についても「勝手に占領軍がこしらえた一方的な裁判だ」と批判」するのも結構ですし、事後法による違法な裁判という指摘もあることは承知していますが、あたかもサンフランシスコ講和条約を否定するかのような発言は、その真意はともかくこれも日本国の特別職公務員として国家が承認した条約を否定するかのように受け止められる恐れがあります。
「(戦争に)勝った方が正義で負けた方が悪だということはない」と言う点については、私もこの見解には全面的に賛同しますが、それはあくまでもいわゆる思想的、倫理的、というか情緒的な意味合いにおいて同意するのであり、政治的、外交的に一般的に通用するかどうかは全く別次元の問題だと思っています。
一言でいって、いくら自民党内の会合であるとはいえ政務次官として国際感覚のないかなり突出した発言であるという印象をぬぐえません。
そもそも靖国問題は国内問題だってみんな言ってるのに、どうしてこちらから喧嘩を売るかのようにわざわざ食いつきやすい餌をばら撒いて一生懸命国際問題にしたがるんですかねえ。これでまた中韓が鬼の首を取ったかのように騒ぐのは火を見るより明らかですよ。小泉が過去の過ちをいくら謝罪しても「本気かよ」って思われるのは必定ですわな。政府公式見解と与党自民党議員さんの言う事がバラバラなのがそもそも問題なんですよ。
そしてさらに言えば、まさに日本は「負けた」のです。負けた事をきちんと客観視して事実として受け入れていれば、このように政治的に子供じみた事は絶対に言わないはずです。国際社会がまさに生き馬の目を抜くような苛烈な行動原理で動いている以上、たとえそれが情緒的に正しくなかろうが政治的にはあくまで「負けた方が悪」なのです。
だからこそ戦争は負けたらいけないのです。絶対に負けたらいけません。何が何でも勝たねばならないのです。
Yahoo!ニュース - A級戦犯「罪人ではない」=靖国参拝正当化-森岡厚労政務官が発言 より
森岡正宏厚生労働政務官は26日の自民党代議士会で、靖国神社参拝問題に関して、「戦争は一つの政治形態であり、(日本は)国際法で定められたルールに乗っかって戦争をした。A級戦犯は罪人ではない」と発言、小泉純一郎首相らの靖国参拝に問題はないとの考えを示した。過去の侵略を正当化する発言として、中国などが反発を強める可能性もある。
森岡氏は「中国に気遣いをして、(靖国にまつられる)A級戦犯がいかにも悪い存在だという処理をされているのは残念だ」と強調。戦犯を裁いた極東国際軍事裁判についても「勝手に占領軍がこしらえた一方的な裁判だ」と批判、「(戦争に)勝った方が正義で負けた方が悪だということはない」などと語った。
(追記)
Yahoo!ニュース - 厚生労働政務官「A級戦犯は罪人ではない」 より
森岡氏は取材に対し、「政府の取るべき立場を申し上げた。首相の靖国神社参拝を後押しする発言が、政府見解と違うということはあり得ない」などと語った。
森岡議員は自分の立場を十二分に理解した上で発言したようですね。後々「誤解を招く表現をして申し訳ない」とか謝罪するようなヘタレなことはしないでもらいたいもんですね。
投稿者 青柳 洸 at 午後 06時21分 靖国問題 | Permalink
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/41978/4288590
この記事へのトラックバック一覧です: 戦争犯罪は罪ではない、か?:
» ■中国に反発、A級戦犯は日本国内では罪人ではない トラックバック はずれ刑事慎重派パート3
---日経05/05/26記事引用---森岡正宏厚生労働政務官は26日午後の自民党代議士会で、小 続きを読む
受信: 2005/05/28 2:03:39
» 東京裁判についての社説比較。 トラックバック りゅうちゃんミストラル
中国副首相の会談キャンセルに端を発した靖国参拝について、メジャーな新聞である産経と朝日が社説で取り上げている。この二つの社説比較はとても興味深い。考えを自由に述べられるのは表現の自由という点においてはいいことだが、同時に日本でも東京裁判については一枚岩...... 続きを読む
受信: 2005/05/30 16:49:20






コメント